2015年6月9日火曜日

久々に楽しいジャズを満喫 @ Dizzy's Club, NYC

この週末はドラマーで、ジャズジャイアンツの一人、Albert ”Tootie" Heathの80歳のバースデーセレブレーションが三夜連続でJazz at Lincoln Center, "Dizzy's Club"で行われました。

6月5日(Fri) : Ethan Iverson Trio
6月6日(Sat) : Jeb Patton Trio
6月7日(Sun) : Jeb Patton Trio with special guest, Jimmy Heath (ts)

トゥーディーは現在、イーサン・アイバーソンのトリオと実兄のJimmy Heathと共にThe Heath Brothersと二つのグループを中心に活動しているので、このラインナップになった模様。ジェブはThe Heath Brothersのピアニストなので、ありがたい事に二夜続けての出演と成りました。ジェブは金曜日初日のセカンドセットに彼らの演奏をチェックしに行きましたが、私は遠慮して行かなかったのだけど、やはり満席だったそう。




イーサンのトリオではどちらかというと、トゥーディーは彼らの音楽性に合わせて演奏しているので、若手のジェブとデイヴィッド(David Wong:Bass)はトゥーディーのリクエストで彼のやりたい曲( 若い頃にレコーディングした曲等)を中心に演奏することにしていました。ジェブは何日も前からトゥーディー自身が作曲した曲や過去の素晴らしいジャズミュージシャンとのレコーディングを掘り起こして、蘇らせるという方向でセットリストを作っていました。例えば、実兄Percy Heath (Bass)作曲の"Water Gate Blues"、Lester Young (Ts)の好みの曲で何度も一緒に演奏した"Polka Dots and Moonbeams"、Ray Bryant (P)作曲の"Cubano Chant"、Bobby Timmons (P)作曲の"'Dis Here"、Tootie自身作曲の"Four Seven Sake"等。




 ジェブとデイヴィッドは事前に簡単なリハーサルをしていましたが、サンタフェ在住のトゥーディーは5日の木曜日にNY入りなので、彼とは電話で曲名を話していただけで全くリハーサルをしていませんでした。1950年代に演奏していた曲の一つ一つの決め(フィルやヒット)を忘れずに演奏していたトゥーディーの記憶力とそれをブラッシュアップさせるための自主練、80歳にしての努力、ジェブも私も脱帽。特に"Cubana Chant"なんてトリッキーな曲は正確なメロディーとアクセントやタイミングを頭に入れるだけでも数日かかります。

話はそれますが、ジャズミュージシャンは自分の好きな曲ばかりを好きなように演奏しているわけではなくて、特にリズムセクション(Piano, Bass & Drumms)は国内外の星の数ほどのミュージシャンのサポートをします。一回だけのレコーディングやコンサートで他の人のオリジナル曲や、スタンダードでも数え切れないくらいのアレンジをたった一度きりの本番のために演奏します。年間スケジュールが出るようなグループで活動しているバンドのレパートリーは例外ですが、単発のギグやレコーディングなどのアレンジはコンピューターのメモリに上書きしていくという感じなので、3ヶ月前に演奏したアレンジは完璧に忘れているというのが当たり前なんです。だから、逆に譜面に強い(初見で完璧な演奏ができる)ミュージシャンは明日本番の仕事が今日来たり、今夜の仕事が今朝来たりする訳ですね。

日頃トゥーディーはリーダーとして活動することはないので、この3夜連続のギグは、ここぞとばかりにマイクで昔の思い出、裏話や面白いことを曲紹介に合わせてMCで喋り捲って会場を笑の渦に巻き込んでいました。本当に彼は"Natural born comedian!"産まれながらのコメディアン、エンターテイナーです。