2024年8月1日木曜日

ハンドメイド*2枚の大島紬を使って洋服にリメイク

 

お茶の先生から着物リメイクでお尻が隠れるぐらいの丈で前あきのブラウスを作って欲しいと、泥大島と白大島の着物を解いた生地をお預かりしました。


泥大島は先生の叔母様から譲られた着物。何度か洗い張りをされていたらしく、数箇所にかけはぎがされていて、丁寧にされてきた事がうかがえました。大島特有のパリッとした感じは無く、光沢があるのにとてもふんわりと柔らかい風合いなのに針を刺すと繊維に粘りがある生地でした。柄も小さな伝統柄なので、洋服にするととてもモダンな印象です。昔のものは質が良いですね。白大島の単はご友人から譲られた着物だそうで、恐らく昭和のものでしょう。パリッとした感触で艶のあるシンプルな蚊絣が粋でお洒落です。


小柄な体型、お年と雰囲気、好み等を念頭にイメージに近いデザインを探しました。色々悩んだ結果。折角着物2枚を使うので、手元にあった吉田三世先生の『古きもので作る洋服と小物』のリバーシブルベストをメインに生地の状態と相談しながら作れるだけ色々作ってみる事にしました。

状態の良い部分をたっぷり使ってベストから作成。大島紬は平織りなので、扱いやすく作業がし易い事がわかってサクサク進みます。しかもベストは着物の生地をうまく利用した直線縫いなので、あっという間に出来ました。力のかかりやすい袖口や襟付けには柔らかい接着芯で補強をして、全体のサイズも小柄な先生に合わせて小さくしました。
ベストを作っている間に、泥大島の生地の風合いがとても良いので通念で着用できるトップスを作るときっと素敵なのができる!と思ったので、同じ本の中にあるシンプルトップスのパターンを参考にアレンジを加えて後ろ丈が長いブラウスにしました。前身頃の裾と辻褄を合わせるために脇にスリットを入れています。襟ぐりはバイアステープでは無く身返しで処理。前身頃はジオメトリック柄がずれないように上下を合わせてはいでみました。このブラウスのパターンは自分でも手持ちの着物地で作ってみたいと思いました。

最後にまだ沢山残っている白大島をたっぷり使って何を作るかとても悩みました。先生はスカートは履かないので、チュニックブラウスを作るかパンツ。
私自身、過去に大島で作ってみたキュロットは家の中で通年便利に着用しているので、思い切ってキュワイドパンツにする事にしました。大島紬のパンツは本当に軽くて履き心地が良く、冬はヒートテックやタイツと合わせれば家の中では十分暖かく過ごせます。真夏は冷房がきついアメリカですから、絹は下半身も冷え予防にもなります。折角の着物リメイクだから、白大島をパンツにする贅沢もよいのでは無いでしょうか?
お洋服のスタイリングに自信がないとおっしゃる先生なので、2枚の着物の色柄が相性が良いこともあり、全部一緒にコーディネートが出来るようにご提案するのも良いアイディアかなと思いました。

最後の最後に残った生地でリバーシブルベレー帽も作ってみました。意外と簡単に出来るので、端切れをパッチワークして作るのも楽しそう。これはハマりそうです。帽子なので、接着芯を貼って張りが出る様にしました。これまたとても軽いので、室内でも被っていられそうです。

リバーシブルベストはブローチで留めても素敵ですね。自作のブローチは、特大のくるみボタンキットに着物の端切れを使ったつまみ細工のお花を施して作ったものです。


自分でも満足する出来だったので、時間ができたら今度は自分用にも作ってみたいと思った今回の着物リメイクプロジェクトでした。

もう何冊か出版されていますが、吉田三世先生のリメイクのレシピは着物の生地幅を上手に生かしたパターンなので、比較的初心者にも作りやすく、形やデザインも良いのでお勧めです。着物を普通の洋服にリメイクすると、どうしても断ち落として無駄にする部分が多くなるので、そういうリメイクをしたい場合はプロのテイラーに任せれば良いと思う私です。着物をリメイクするからこその形があってよいと思うし、それが着物リメイクの楽しみでもあり醍醐味の様な気がします。

2024年5月9日木曜日

ハンドメイド*洋服生地で春夏の着物用薄羽織を作る

 

初めて作ってみた薄羽織
大正ロマン風にも見えます

桜の時期が終わったら、袷羽織はおしまいと言われています。特に女性は帯付きで外出して良いわけですが、今年のNYは桜が咲いているのにオーバーコートが手放せないという寒さ。5月に入っても夜はぐっと冷えてオーバーを着て出かける日が続いていました。ゴールデンウィークに入ってからやっと半袖を着る日がチラホラ。この分では穏やかな春の陽気は短くて、急に猛暑の夏日になってしまうのではないかしら?とジェブさんと話していた所です。

帯付きで外出する季節になっても、NYにいるとやっぱりチリ除け的なものは欲しい。だけど、埃や排ガスが多いNYの街中を歩くので、お家で洗えるものが欲しくなります。日本でも近頃は単の薄羽おりが推奨されているようです。風通しの良いポリエステルのお洒落なレースや透ける素材のシフォン、麻素材で法被や羽織で長めの丈の物があったら、室内でも着用出来るし便利かもしれないという事で、意を決して自分で作る事にしました。



袖をぶっつけでレイアウト


NYのファッションディストリクトへ出かけて、日本で販売されているレース羽織に使われている様なお洒落なレースは無いか見て回りましたが、問屋街で扱われているレースという布はほとんどがフランス製やイタリア製なので本当に高い。結局一目惚れしたプリントの絹麻の生地をMood Fabricsで購入。絹麻なので$25 / 1 yard(約90cm)とお高めになってしまいましたが、自分で縫えば仕立て代はタダ!という事で4ヤード購入。幅が140cm位だったので、長羽織にしなければ3ヤードでも足りたかもしれません。

袖を追っかけでレイアウト


まず、布は洗濯機の手洗いモードで水通しをして2cmくらいは縮みましたが、色落ちなどはありませんでした。裁断は袖の分は反物幅と同じ38cm、左右の身幅は背中心で15mmで縫い合わせる事にしたので76cm + 3cmの幅で長手にカット、残りの20cm位の細長いピースは棒えりに使いました。背縫は別になくてもいいので、生地の素材や柄によっては無い方が良いです。和裁でも要塞でも一番面倒なのが裁断。柄あわせ、裁ち合わせ、生地の目、一番頭を使います。この生地は大胆で派手な縦縞でもあり格子柄でもあるので、落ち着いた印象にしたいのか、お祭り騒ぎみたいな印象にしたいのか、柄合わせで印象がかなり変わってきます。





今回は「追っかけ」にして落ち着いた印象にと心に決めたのですが、何を血迷ったか、袖を作り急いだせいで気づいたら右の袖を2枚作っていました。結果、襦袢の袖付けのような「夕日断ち」になってしまいました。(笑)でも、こうすると袖は左右対称になるので、そんなに変では無いですね。自分が着るんですから、自分さえ良ければいいんです。







今回の仕立て方は身頃は法被のような感じで、身八つ口を開けて袖は着物の作り方、羽織紐をつけられる様に乳を付けています。着物の上から羽織るとやっぱり裄丈や袖丈の短い着物の場合は袖が羽織の振りから出てしまうので、男仕立ての羽織にするか、たもとを深めにした船底袖の法被仕立てにする方が安定して作り易いし、着物も汚れにくいかもしれないと思いました。

この長羽織は夏のキャミワンピやタンクトップの上に羽織ってもカッコ良さそうですね。







色が濃い柄なので、ぱっと見た感じは透け感はあまり確認できませんが、実はかなりシアーなんです。絹麻なので張り感があって、ふんわりとした印象の布です。武士の裃の生地ってこんな感じなのかな?シワも出易いとは思いますが、戻る感じがあるので先ずは今シーズン着てどうなるか検証してみます。


透け感はこんな感じ






2024年2月19日月曜日

ハンドメイド*大正ロマンの着物からワイドパンツ

 

久々にアンティークの着物を解いて洋服を作りました。ブログも本当に久しぶりに更新です。パンデミックの間に大学に通い、昨年卒業してその後、日本に里帰りをしたり、本当にバタバタしていました。


このお着物は骨董コレクターの陶芸家の伯母から、ずいぶん前に断捨離でいただいたものです。彼女はこれでお人形を作ろうと思っていたみたいです。八掛は肉色、胴裏には真っ赤な紅絹が付いていました。私は少しの間自分で着られないかな?と思ってとっておいたのですが、やっぱりサイズがとにかく小さい。恐らく身長が150センチに満たない女性が着ていたんでしょうね。汚れやほつれもかなりあったので、思い切って解いて洗うことに。


一時期Dories Van Notenの大胆なフラワープリントに憧れた時期もあったけど、和服の花模様もこうやってお洋服にしてみるとパワーがありますよね〜。地色はいわゆる日本の藤紫とお抹茶色の暈しのコンビ。独特の渋さの中に艶の有るデザインですね。華奢な女性なら夢路美人、豊満で色っぽい女性が着るとアダっぽくなりそうな雰囲気。

パターンはYouTubeで適当なのを探して、丈は自分好みにしてみました。今回はパイピングのポケットにも挑戦してみました。




このお着物は何度も何度も仕立て直して大事に着られていた様で、あちこちに掛けはぎがしてありました。仕立ての縫い目もザクザクと大きくて、仕立てたのは和裁士さんじゃ無いかもね。昔は自分で洗い張りしてたから、ひょっとしたらご本人とかお婆ちゃんとかかもしれませんね。なんだか縫った人や着ていた女性の大らかさがわかる感じがしました。着物を解く時の楽しさはこういう所ですよね。




ミシンで塗っている最中にも、縫い目が裂けてきたので、縫い目を薄手の接着芯で補強しながら縫いました。多分、着ている間にシームの布が所々裂けてくるとは思うけど、腰回りには比較的新しい着物の薄紫の八掛で裏地をつけているので、仮にお尻の縫い目が裂けてもまあ惨めな感じにはならないでしょう。その代わりにお尻周りが、気持ちふっくらしてますね。私の大きなお尻が強調されてる感じ。(笑)
それでも、このパンツでお茶のお稽古はやめておこう。にじる時にビリっといきそうだからね。

秋冬はこんな感じでスタイリング。春になったら白いブラウスやTシャツと合わせてみようかな?ジャズライブには黒のスパンコールのトップスが似合いそうです。



2022年8月6日土曜日

ハンドメイド*夏の着物を解いてワンピース

 

2022年の夏休みは、コロナに感染したりであまり気力がなかったけれど、思い立ってワンピースを作りました。

とにかく風通しの良いムームーの様なワンピースを薄物の生地で作りたかったので、レシピはネットで探して、とにかく直断ちでサッと作れる簡単な形を選びました。

身頃は解いた身頃の着物を左右、前後と4枚剥ぎ合わせただけ。脇は直線で襟ぐり見返しだけの仕立て方です。



生地は黒地に流水と紅葉です。かなり古いのと乱暴に解いてあったので、縫い目は所々に穴があり、肩の部分には穴を塞いで繕ってありました。(笑)

写真では真っ黒に見えますが、後ろから光が当たると透けます。下には黒いキャミソールを着ています。白いキャミソールに白いワイドパンツでスタイリングもしてみたいです。


出来上がりの身丈が120cmのロング丈にしたので脇に20cm弱のスリットを入れました。

着物の布巾が36cmほどで身幅が広いので、肩が二の腕の中程まで落ちて、一番太い所を横切る感じで袖先になり、全体のシルエットは袋をかぶっている印象になりました。





シルエット的に垢抜けず、腕も太く見えるので中に5センチほど内側(裏)に織り込んで、脇もその分タックをとって、脇下のあき止まりから10cm位下がった所をボタンで前後を止めています。ちょうど良い具合にフレンチスリーブ感が出て、二の腕も逆Vに現れるのでスッキリしました。







ハンガーに掛けると、何の事は無い四角いワンピース。

肩下がりを斜めにカットしているので、肩先を内側に折り込むとピンと立ってしまうのですが、それはそれで袖口っぽい仕上がりになるので良しとしています。(笑)

形がシンプルな分、着る人の体型や雰囲気で変わるので、また違う生地で作ってみたいと思います。

2021年8月19日木曜日

ハンドメイド*木綿の洋服生地で着物 Vol.3

コンサートから帰宅した夜
ジェブさんが撮影

 


夏休みを利用して、木綿の洋服生地から着物を作る第三弾は帯です。

冬の間にEtsyで買った可愛い生地で、早速お得意の2部式名古屋帯と、半幅帯を作りました。

(帯その1)

ジャズヴォーカリストの血が騒ぐ、可愛いジャズ演奏楽器をモチーフにした黄緑色のプリントを発見。いつも通り、リバーシブルで使える様に腹合わせにするので、音楽つながりでデザインテイストもマッチする音符をデザインしたグレーの生地を選びました。


所が、Etsyのショップで購入可能な長さがどちらも残り少なく、幅広ということに望みをかけて1ヤードづつ購入したと記憶しています。上手くすれば名古屋帯一本取れるかな?と思ったけど、洗ってプリントの柄ゆきをみて無理だと判断。

なんと、グランドピアノのプリントは反転されていて、左右の向きが逆転しているピアノの方が多かった。ピアノを演奏する人ならすぐわかる、何か変だと。ピアノは右へ行くほど高音域、左側は低音ですから、左のピアノ線の方が長いはずなんですね。

あくまで楽器はデザインのモチーフでしかなくて、細かい事にこだわら無いデザイナーさんだったのでしょうね。デザインを学んだ身としてはこういう所でデザイナーのこだわりが出るんだな〜って改めて感じてしまった。

さて、困った。主人はピアニストだし、私たちの周りはミュージシャンばかり、そもそもジャズライブに着ていくのが目的だから、頭をひねって表に見えるところに正しいピアノの絵を持ってくる様に繋ぎ方を考えました。

左の写真2枚はセルフィーなので、左右が逆転しています。ちらっと見える音符のグレーの裏が可愛いでしょ?

冒頭の写真、ギンガムチェック着物を着て、主人が演奏するコンサートへ行って着たときの事です。コンサートホールの近くをジェブとベーシストのデイビッド・ウォンと歩いていると、中国人の年配の紳士に呼び止められて、「あなたは日本人ですか?私は昔満州にいました。」と英語で言われました。私は一瞬私の着物姿で辛い過去を思い出して何か言われるのかな?と考えましたが、その紳士は満面の笑みで日本語の歌を歌ってくれました。「この歌を知っていますか?」と聞かれたのですが、多分戦前の歌らしく、全く知ら無い曲でした。『夜来香』や『蘇州夜曲』だったらわかるんですけどね。丁度主人と一緒に歩いていたので、「彼はご主人ですか?日本語を話しますか?話せ無いの?奥さんから習いなさいね。」と言って、この紳士は名残惜しそうに去って行きました。若い頃に日本人との良い思い出があった方なのかもしれませんね。一緒にいたデイビッドは中国人と白人のハーフですが、戦前からの日中関係の歴史認識までは持ち合わせてい無いので、私たちの様子を面白がって見ていました。老紳士には「君は中国語話せ無いの?」と突っ込まれてしまい、ちょっと笑えました。アメリカには着物に良いイメージを持たないアジア人も少なくないですが、人それぞれなのですね。

Flushing Town Hallの楽屋でのスナップ
向かって右から Jeb Patton (P), David Wong (B)
Antonio Heart (As), Fredy Hendricks (Tp)
Steve Davis (Tb) and Vince Ector (Ds)

ビールグラスの半幅帯

(帯その2)

こちらはEtsyで発見したポップで可愛いビールグラスシリーズの木綿生地。着ていて楽しくなる半幅帯を作りたいと思って、この生地を2ヤード買いました。ほぼ全てのビールのスタイルを網羅しているので、見ていて本当に楽しいです。

私が飲んでいるIPAはこれ、あなたのピルスナーはここだ!とかね。

私が住んでいるグリーンポイント周辺にはローカルブルワリーや直営のバーレストランが色々あります。

笹結び
Greenpoint Beer and Ale Co.はオーナーともお友達です。こんな帯なら夏だけでなく、秋のオクトーバーフェストにも締められそう。コロナが収束したら、またドイツに行きたいですね〜。ケルン楽しかったな。

裏の生地はワインプリントにするか、悩みに悩んだ末、シンプルにリネンブレンドのチェッカー模様で、厚地のインテリアファブリック。幅広なので、ハーフヤードで十分半幅帯分取れます。こちらはNYのファッションディストリクトにあるプロ御用達の生地屋さんで購入。



半幅太鼓結び

ビールグラスのプリントが真ん中に2段になる様に帯幅を多少広げました。私は胴長なので、16cm程度がちょうど良いです。16cmに縫い代をとると、どうしても無駄になる部分が出てくるので、生地を多めに買っておいてよかったです。色々な帯結びをしたかったので、繋ぐ部分が隠れる様に3枚とちょっとを繋いで4メートルに近い長めの半幅帯にしました。

帯は柄合わせをしっかり計画して、長い直線を真っ直ぐに切って縫えば良いので、布と帯芯を断って仕舞えば、後は早いです。因みに芯はアメリカの材料屋さんで売っている洋裁用のメッシュ芯です。柔らかいですが、接着芯より軽くて通気性がありそうなので愛用してます。